家事には終わりがありません。そのうえ、どれほど丁寧にこなしても収入にはならないため頑張りが見えにくく、評価されないことに対して疲れてしまう方もいるでしょう。
実は、普段行なっている家事を収入に換算するとどのくらいの金額になるのか、具体的な数字で算出できることをご存知でしょうか。
近年では家事を労働と捉えて、年収に換算する指標が登場しています。そこで今回は、家事を年収換算した金額や、年収を知る意味などについて解説します。
家事による年収は約370万円
家事による年収の算出方法は複数あり、その一つに「機会費用法」 があります。機会費用法とは「家事に費やしている時間を、賃金が発生する環境で労働に充てていたらいくらになるか」を考えて計算する方法です。
この方法を用いて家事を年収換算すると、その金額は約370万円になるとされています。
以下は、内閣府経済総合研究所が公表している「無償労働の貨幣評価」のデータを参考に家事の時給を算出した結果です。
・女性の1年間の家事の時間:1,313時間
・貨幣評価額:193万5,000円
・時給:約1,473円(193万5,000円/1,313時間)
なお、仮に1年間休みなく家事をし続けるとすると、1,313時間/365日≒3.59時間となり、1日あたり約3.6時間も家事に費やしていることがわかります。特に、共働きの家庭で夫婦のどちらか一人だけが家事も行なっているとしたら、大きな負担といえるでしょう。
また、前述の計算式から導き出された家事の時給をもとに年収を計算すると、次のような結果となります。
・1,473円(時給)×7(時間)=1万311円(日給)
・1万311円(日給)×30(1か月の日数)=30万9,330円(月収)
・30万9,330円(月収)×12(1年間)=371万1,960円(年収)
このように、家事の1日あたりの収入は約1万円、月収は約31万円、年収は約370万円となります。ただし、家事は外での仕事のように決まった休憩時間や休日があるわけではないので、「1年間休まずに毎日働いている状態」とも表現できます。
年齢別の平均年収と家事による年収を比較
次に、年齢別の平均年収と家事による年収を比較してみましょう。年齢別・男女別に分けた労働による平均年収は次の通りです。
- 20代 男性:369万円 女性:319万円
- 30代 男性:481万円 女性:375万円
- 40代 男性:567万円 女性:401万円
- 50代以上 男性:671万円 女性:428万円
年代別の平均年収と機会費用法を用いて算出した年収370万円とを比較すると、20代男女の平均年収よりも上回っており、30代の女性とほとんど同等の金額です。平均年収によると女性の年収は男性よりも低い傾向があり、50代以上でも428万円と、家事の年収とされる370万円をそれほど大きく上回っているわけではありません。
さらに、機会費用法では「女性の1年間の家事の時間」をもとに算出している、という点もポイントです。特に女性に限っていえば、家事労働を収入に換算した年収は全年代の平均年収と大差はありません。
このことから、家事は外で働いて賃金を得る仕事と何ら変わりない労働であると考えられるでしょう。
家事によるおおよその年収を知る意味
家事の年収を知っても、実際は家事によって収入が得られるわけではありません。しかし、おおよその年収を知ることには次のような意味があります。
家族やパートナーに家事の大変さを理解してもらえる
家事が立派な労働だと知ることで、家族やパートナーにも家事の大変さを理解してもらうきっかけになります。人によっては「家事はやって当たり前のこと」だと思っている場合もあり、パートナーがどれだけ頑張っていても苦労が伝わらないこともあるでしょう。
「家事は大変なものだ」という認識がない相手に、どれだけ家事の大変さを伝えようとしても、理解してもらうのは難しいものです。不満を口にしているように受け取られ、ケンカに発展することもあるかもしれません。
そこで、家事を年収に換算した具体的な数字を見せれば、家事の大変さを理解してもらいやすくなるでしょう。
家事分担をお願いしやすくなる
家庭内で片方だけが家事の大半を担うワンオペ状態になってしまうと、相手への不満やストレス、疲労などがたまったり、場合によっては精神的な不調を引き起こしたりすることもあります。
日々の生活に余裕をもって家事をこなすためには、一人で抱えるのではなく、家族やパートナーとの家事分担が大切です。
特に、共働きの場合は仕事と家事の両立に苦労している方が少なくありません。共働きにもかかわらず、ワンオペになっていると負担が非常に大きくなってしまいます。
その際は「家事を労働として考えると、年収が約370万円になるくらい大変なんだよ」と具体的な数字を伝えることで、家事分担を相談しやすくなるでしょう。
まとめ
家事を機会費用法で年収に換算すると、約370万円もの労働になります。外で仕事に出て賃金をもらう仕事とほとんど変わらない金額になることから、家事も立派な労働と呼ぶことができるでしょう。
「家事なんてやって当たり前」と思っている方も、労働に置き換えた具体的な数字を知ると認識が変わるかもしれません。
家族やパートナーが家事に協力的でないときは、家事を労働として捉えた場合の年収を伝えることで、家事分担を切り出しやすくなります。お互いに協力し、少しでも家事の負担を軽減できる環境を作りましょう。